調査結果
HIV診療・治療とコミュニケーションについての調査結果
この結果報告書は、HIV 陽性者向けのウェブアンケートの集計結果を紹介するものです。調査に参加いただいた HIV 陽性者のみなさん、調査協力をしてくれた NGO の方々はじめ、多くの方々に結果をフィードバックするために、集計結果を公表いたします。
調査結果は、以下のリンクより全文をPDFでダウンロードいただけます。
<結果報告書PDF版>
HIV診療・治療とコミュニケーションについての調査_結果報告書、PDF版
【この調査について】
HIV陽性者の治療・服薬を支援していく上で、HIV関連情報や医療関係者とのコミュニケーションに関するHIV陽性者ならではの支援ニーズを明らかにすることを目的として、2020年7月13日から8月17日に無記名自記式ウェブ調査を行いました。調査回答者は650人でした。得られた回答データを精査し、不正回答・重複回答を除外した631人の回答を有効回答として分析を行いました。
【結果1:現在の健康状態】
回答者の9割以上が現在の健康状態が良いと回答していました。一方、回答者の6割以上がアレルギー疾患、高血圧症、精神・神経疾患を始めとした何らかの慢性疾患に罹患していました。また、ここ数日の病気やけがによる自覚症状は、肩こり、腰痛、体がだるいなどが多く挙げられており、それぞれ2割程度いました。
【結果2:通院している医療機関】
回答者の9割以上がHIVの治療を目的として定期的に通院しており、さらにその9割以上が抗HIV薬を服用していました。服用している薬剤は、ほとんどは1日1回の服用でした。また、回答者のおおよそ6割の人がこれまでに薬剤を変更した経験があり、変更理由は、錠数を少なくするため、副作用を軽減するため、という理由が多く、薬剤変更のきっかけは9割以上が医師の薦めでした。
【結果3:HIV情報関連】
多くの人がHIVの最新の治療に関する情報や新しい薬に関する情報を求めていました。主に医師やWebサイトからこれらの情報を得ているものの、十分な情報を得られていないと考えている人が6割と多いことがわかりました。自分から情報発信している人もおおよそ1割いました。
【結果4:医療関係者とのコミュニケーション➀】
医師とのコミュニケーションに関しては、ほとんどの人が医師と最近の体調について話をしており、治療や服薬に関する話をしている人も多く、話した人の9割は内容を理解しているようでした。そして、診察の際、大半の人が医師に本音で要望を伝えられており、伝えた結果は概ね良い結果になったと考えられていました。看護師とは回答者の4割が、薬剤師とは3割がHIVに関連した話をしており、看護師とは特に仕事や趣味といった治療や服薬以外の話、薬剤師とは薬の副作用や治療(薬剤)、薬の飲み忘れなど、薬に関する話をしている人が多いことがわかりました。
【結果5:医療関係者とのコミュニケーション②】
体の不調について医療関係者に相談したい時には、8割以上の人が相談できており、医療関係者から不調がないかたずねられた時も必ず伝えられている人が半数程度いました。一方、不安や悩み事は余程なことがない限りは相談しなかったり、たずねられても伝えていなかったりする人が多く、体の不調ほどには医療関係者に伝えられていない様子が伺われました。また、抗HIV薬の新薬については、7割以上の人が医療関係者から新薬の紹介を受けることは必要だと考えているにも関わらず、医療関係者にたずねたことがある人は3割程度にとどまっており、医師と良好なコミュニケーションを取れている人に対しても新薬については医療関係者からの紹介が必要であることが示唆されました。
【結果6:新型コロナウイルス流行後の変化】
新型コロナウイルス流行後の診察については、電話診療やオンライン診療を受けた人は少なく、多くの人が病院関係者と話す時間や機会は以前と変わっていませんでした。新型コロナウイルス流行後、回答者の6割以上が不安を感じており、特に新型コロナウイルスに感染するのではないかという不安や発熱したときにどう対応したらいいのかわからない不安、CD4が下がっていないかの不安を感じている人が多くいました。流行後の変化については、感染や重症化の不安や経済的な不安を感じるようになったこと、テレワークになったり仕事が減少・失業したりといった仕事面における変化があったこと、また感染予防行動をするようになったこと等が挙げられていました。